理論化学は化学研究の基礎であり、あらゆる物質科学の基盤をなす学問です。

最近の理論化学の発展はめざましいものがあります。新しい理論や理論的手法の開発とその応用研究の発展、コンピュータやアルゴリズムの進歩により理論化学が対象とできる現象や系は大きく拡がり、新たな可能性がひらかれつつあります。理論化学がこれまでにも増して化学の進歩に貢献ができる日がやってきたといえるでしょう。

平成4年度-7年度には理論化学者を主体とする重点領域研究「化学反応理論—理論計算によるアプローチ—」(領域代表者、諸熊奎治教授、岩田末廣教授)が実施されました。 数多くの科学的成果とともに、わが国における理論化学者のネットワークつくりにも大きな成果を挙げました。この間、日本を発進基地とする理論研究や応用研究が次々と提出され、新しい理論研究のグループも各地に誕生しています。多くの研究グループには若手研究者や博士課程の学生が若々しい活躍をはじめています。かれらは互いに刺激しあって新しい分野を開拓しはじめています。

理論の進展と計算環境の改善にともない理論の精度が向上するとともに、計算化学の対象もモデル系のみならず、実際に実験が進められている系をも対象にすることが可能になってきています。他の分野との交流や共同研究も盛んになっています。この傾向は今後ますます加速され、理論化学はきわめて多岐にわたる応用分野と関わっていくことでしょう。

わたしたちはこの発展をさらに一層高いレベルに引き上げ、世界の理論化学における日本のリードを確固たるものにしたいと考え、1997年4月より日本化学会のもとに「理論化学研究会」を発足させました。

日本化学会 理論化学研究会
平尾公彦、岩田末廣、田辺和俊、中辻博、中村宏樹、細矢治夫、吉田元二

[発足時の宣言をご参考までに掲載しております]

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